過去拍手

□15センチの恋人
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柊涼哉(ひいらぎりょうや)は大学からの帰宅途中、地面を見つめたまま立ち止まっていた。
固まっていると言った方が正しいだろうか。
涼哉は目をパチパチさせながら、疲れているのだろうか?と目を擦る。
しかし、目の前の光景は変わらず。涼哉はもっと良く見ようとしゃがみ込んだ。
「人形………?」
地面に落ちていたのは、人の形をした物体。人形のように見えるが、それにしては結構リアルな形をしている気がする。
おそるおそる、涼哉はそれをつまみ上げてみた。
よくよく見れば、やはり人のように見える。
「ん………」
「!やっぱり、人か」
それは、15センチ程の人だった。しかも、見たところ男だ。
つまみ上げてつついてみれば、小さく呻き声をあげる。
「面白そうだな。持って帰るか」
ニヤリと笑いながら、涼哉はコートのポケットに男を突っ込み、家に帰った。
家に着くと、自室へと入る。
ポケットから先程の小さな人を取り出し、机の上に置いた。
涼哉はコートを脱ぎ、ハンガーにかける。
それから椅子に座り、改めて小さな人を見やる。
「男?なのかな?」
こうしてみていると、好奇心が沸き起こる。
着ている服は、涼哉たちと変わらない。
涼哉は楽しげに笑いながら、服に手をかけた。
「ん……ゃ、あ……」
気を失ったまま、それは身をよじった。
声は低めだ。
「何か、人形遊びしてるみたい」
この年で人形遊びって結構危ないよね、と思う。
だいたい15センチくらいだろうか。
涼哉は服を脱がせようと、彼の服をぐいぐい引っ張る。5分ほど格闘して、ようやく上の服を脱がすことができた。現れたのは男と変わらない。いわゆるまな板。
下も脱がせたいが、ベルトが小さすぎて外せなかった。
そもそも体長が小さすぎて、年齢を推測することが難しい。
「起きないかな?」
裸にした体を人差し指で揺すれば、それは大きく目蓋を震わせ、ゆっくりと開いた。
「ん、……な、…に?」
「あ、起きた」
「え……」
涼哉はにっこりと微笑んだ。
「ひ、やぁぁぁ!!?」
「!……小さいくせに大きな声だな」
あまりの声に、涼哉は目を丸くさせた。
「な、な、な、な………っ!!?」
「ちょっとうるさいかな」
そう言って、涼哉は彼の口を指で塞いだ。
「ん!んー!!」
「指一本で済むとか楽だね」
くすくす笑いながら、小さな体でもがく男を見つめる。
小さくて良く分からないが、たぶん、彼は若い。見た感じ、涼哉とさほど変わらないのではないかと思う。
現在、涼哉は19歳の大学生だ。
「んー!ん、んー!!」
抵抗する男に、涼哉の瞳がスッと細くなる。
「うるさいな。静かにしないと、このきれいな肌に傷がつくよ?」
「っ!?」
カッターナイフをキリキリ言わせながら、刃を男に向ける。
それを見た男はビクッと体を震わせ、大人しくなる。
「それで良いんだよ。で?君、何なの?」
ようやく口から指が離れ、男は大きく息を吸った。
「……何って?」
意味をつかみあぐねて、男は首を傾げた。
「人間なの?」
「そうだよ」
「へぇ。ちなみに、男かな」
「当たり前だ!俺のどこが女に見えるんだよ!?」
どうやら彼が気にしていることに触れてしまったようだ。ぎゃあぎゃあ喚く男に、涼哉はにっこりと微笑み、彼を指で押さえ付けた。
「や、やだ!離せ!!」
「ねぇ、君いくつ?」
「離せってば!」
「答えたら離してあげる」
「16!」
「何だ、子供か。名前は?」
まだ少年だったことに、涼哉は軽く目を見張る。
「柚羽(ゆずは)だよ。てか、子供って言うな!俺たちは16で成人なんだよ!」
「へぇ?どのへんが大人なの?」
「え?」
どのへんと言われても、柚羽は答えられず困った顔になる。
それが可愛くて、そして無性に泣かせたくなり、涼哉は我知らず口許を歪める。
「な、何………?」
もっと、困らせたい。歪んだ顔を見たい。そんな衝動にかられた涼哉は、ふとセロテープが視界に入った。
何を思ったのか、涼哉はそのテープを二つに短く切り、柚羽の両腕をそれぞれ机に貼り付けた。
「やっ!?」
怯えた顔になる柚羽に、涼哉は楽しげに笑う。
「良いね、その顔。結構好きだよ」
「や、やだぁ!」
涙を浮かべる柚羽に、涼哉はカッターナイフを手に取る。
「ベルト外すの難しいから切るね」
「え!?」
カッターナイフが、ベルトにかかる。
「ちょ、ちょっと待って!」
「待てない」
言うが早いか、涼哉は柚羽のベルトをカッターナイフで切った。
「!!」
次にズボンを脱がせようとする。
「や!」
足をばたつかせて抵抗すれば、涼哉は柚羽の足を押さえ付ける。
「ん〜。やっぱり小さいから脱がせにくいな。切っちゃうか」
ズボンを脱がせることを諦めた涼哉は、カッターナイフでズボンを端から切り始めた。
「ひ!やあぁぁっ!」
だいたいズボンを切り、最後は引き裂いた。
完全に裸にすれば、やはり男で、涼哉はまじまじと見やる。
「見るなぁ!」
「見ないと大人かどうか分からないよ?」
クスクスと楽しげに笑っている涼哉に、柚羽は涙でいっぱいの瞳を向ける。
そして、足を大きく開かせて、改めて柚羽自身を見る。
「小さいな」
「っ!うるさい!お前と体のでかさが違うんだから当たり前だろ!?」
それはそうだ。
「離せよ!も、やだぁ………っ!」
「ここは感じるの?」
「へ?ひ、ぁあ!?」
くいっと柚羽自身を指で押さえれば、びくんっと体を震わせた。
「あ、感じるんだ?可愛い」
「あ、あ…ん!ん、……ひ、ぁあっ……!」
くにくにと押さえれば、柚羽はビクビクと体を跳ねさせた。
「んぅ!ひ…ぁ……!や、だぁ……!も、許して………!」
「駄目。いくまで止めない」
「っ!?何で………んぁあ!」
何度か指で擦れば、柚羽はビクビクと身を震わせながら果てた。
「ハァ、ハァ………ん、ぁ……」
肩で息をしながら、柚羽はぐったりとする。
「もしかして、初めてなのかな?」
「!あ、たり、まえ……!」
「へぇ。じゃあ、童貞なんだ」
その途端、柚羽は顔を真っ赤にさせた。
「………そ、うだよ」
ここまで来たら、柚羽はもう抵抗する気はなかった。
「そう言えば、何で道端に倒れてたの?」
「え?………覚えてない」
問われても、柚羽は分からなかった。
「家は?」
「………家はない」
首を振る柚羽に、涼哉は首を捻る。
「ない?」
「俺、親いなくて。俺のいた村では厄介者でさ。だから旅に出たんだ!」
自慢気に叫ぶ柚羽に、涼哉はにっこりと笑って指を彼の前につき出す。
「うるさい」
柚羽はぐしゃっと指で顔を押さえこまれた。
「行くとこないならここにいたら良いよ」
そう言ってから指を話す。そしてにっこりと微笑めば、柚羽は彼を見上げた。
「ほんとか!?」
「あぁ。きみの面倒、全部見てあげる」
「え!?良いのか!!?」
「もちろん。安心して」
「っ!!」
何だろう。すごく笑顔なのに、何故か怖い。と言うか、胡散臭い。
それでも、いきなり放り出されるよりかは良いか。
ならば、今は彼に世話になるしかない。
「お世話になります」
「こちらこそ。あ、そうだ。服どうする?とりあえず、ハンカチ巻いとく?」
「ぎゃあぁぁ!!?」
忘れていたみたいだ。慌ててハンカチを受け取り体に巻き付けた。
「どうしてくれるんだよ!?俺の服!!」
「買ってあげるって」
「本当だろうな!?」
「何?疑うわけ?」
また指で押さえ込まれ、柚羽はじたばたともがく。
「あ、そうだ。条件が一つ。僕、騒がしいの嫌いなんだ。世話になるなら静かにすること。もし騒いだら、またやらしいことしちゃうから」
にっこりと言われ、柚羽は顔を真っ赤にさせて身を退いた。
「わ、分かった!気を付ける!!」
「そう、残念」
何が残念だ!と騒ぎたかったが寸前でこらえる。
「じゃあ、よろしくね」
「あぁ」



こうして、涼哉と柚羽の奇妙同居生活が始まった。




続く……?
 

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